新2世タレント急増 「手に職」「TV出演は通過点」の傾向も

NEWS ポストセブン

 今、新たな2世タレントが現れている。元巨人・桑田真澄の次男でブライダルモデルのMatt、元横綱貴乃花の長男で靴職人の花田優一、人気リポーター阿部祐二の娘で「2017ミス・ユニバース・ジャパン」グランプリに輝いた阿部桃子

 ほかにも、草刈正雄の娘でパーソナルトレーナーの紅蘭、元祖女芸人・野沢直子の長女で格闘家の真珠・野沢オークライヤー佐藤浩市の息子で今年俳優デビューを果たした寛一郎(かんいちろう)、哀川翔の次女で女優の福地桃子など、昨夏から芸能人の子息による不祥事が取り沙汰されてきたにも関わらず、活躍が目立つ背景には何があるのだろうか。またそこに共通している特徴を探った。

◆変わらず続く2世への関心の高さ

 昨年8月、俳優の高畑裕太が強姦致傷容疑で逮捕(のち不起訴処分)されたことを受けて関係各所は対応に追われた。放送予定の出演ドラマは一部シーンを撮り直し、映画は上映中止を余儀なくされた。母親である高畑淳子には批判が殺到し、テレビ出演を自粛した。

 業界を巻き込んだこの事件。テレビ関係者の間では「2世」の起用に対し自粛ムードが広がった。そんななか、2か月後の同年10月4日、『踊る!さんま御殿!!3時間SP』(日本テレビ系)の中で早くも芸能人親子が大挙して出演した。

 ここでは西郷輝彦の三女・今川宇宙や、手塚理美の次男で大学生の日南人など新たな2世が登場し、番組の視聴率は16.8%(ビデオリサーチ調べ、関東/以下同)をマーク。1月5日の新春スペシャルの17.2%に次ぐ昨年2番目のハイスコアだった。

 さらに年が明けた今年3月7日の2世スペシャルでも14.4%と、2世タレントへの関心の高さが改めて再認識されたのだ。

『さんま御殿』は業界から注目度の高い番組とされ、タレントの扱い方が明石家さんまのイジりで決まるとも言われている。そんな『御殿』で2世が出演して高い関心を集めたことで、テレビマンの2世への心理的抵抗がやわらいでいった。


◆異業種から光が当たるパターン

 では最近の2世にはどんな特徴があるのだろうか。例えば、必ずしも芸能界に主軸を置いていないことが挙げられる。Mattはブライダルモデルとしてファッションショーのランウェイを歩き、花田優一は靴職人として完全オーダーメイドの靴を作り、野沢直子の娘の真珠は格闘家としてリングに立ち、紅蘭はボディーメイクやリハビリといったトレーニング指導の国際資格「NSCA」を取得して教室を開くなど、自分にしかないスキルを身に着けている。

 こうして親と同じレールを歩くのではなく、自分だけの生き方を見つけた2世は世間からも好印象に映る。

 もちろん起用する側としても、「2世」というだけで売り出されているタレントよりも「付加価値」がついているので重宝するだろう。さらには親とのギャップがテレビマンを惹きつける。

 また、これまで2世タレントの鉄板トークといえば「1か月のお小遣いは?」「親が芸能人で損したこと得したこと」など、あくまでも親の庇護のもとでの出来事に終始していた。しかし、「新・2世」に対しては、現在就いている仕事についての話もしてもらえるので、トークの幅が広がる。
 
◆最近の2世もさとり世代? 芸能界も通過点か

 そんな2世たちは「芸能界への意識」もドライだ。ブライダルモデルのMattは、将来は音楽で生計を立てていきたいと語り、《今はテレビや雑誌を通して存在を知ってもらう時期だと思っている》(『婦人公論』2017年4月25日号)と語り、テレビ露出は自分の目標のためと割り切っている。

 また花田優一もトーク番組に出演した時、「親父のことを聞いてこられるのが悔しい。こういう番組に出るのは靴職人に注目してもらいたいから」と語っている。先日芸能事務所に所属したことがニュースになったが、テレビ出演は自分の夢のためのツールだというわけだ。

 紅蘭も、俳優である父の仕事にはそれほど興味がなく、《『真田丸』は4話までしか見ていないんです》(『週刊新潮』2016年10月13日号)と正直に答えている。


その草刈からは《女優やれって、今でも言われます。ただ、女優って本気でやらないとできないから。(中略)人から言われて、やるもんじゃない》とも答えている(『週刊実話』2017年5月25日号)。

 子が親の名声をあえて利用しない傾向も顕著だ。ダウンタウン浜田雅功の息子でロックバンド「OKAMOTO’S」のベーシストであるハマ・オカモトは、浜田の2世であるという事実を発表するなら自分自身のキャリアをしっかりつけてからという本人の意思により公表しなかった。初めてハマが自分から名乗ったのはソニー・ミュージックアーティスツでメジャーデビューして3年後の2013年だった。

 寛一郎は映画初出演作となった『ナミヤ雑貨店の奇蹟』には、父が佐藤浩市であることを隠してオーディションを受けた。二宮直彦プロデューサーは「彼の佇まいと目がとても印象的で好感を持ちました」と起用理由を語り、のちに佐藤の名前を聞いて驚いたという。

◆親のサポートは今後、減少傾向に?

 一方、親の子育ても変わってきた。小川菜摘はハマの仕事に対して「何ら御膳立てはしてこなかった」という。

 また佐藤浩市寛一郎の俳優活動に一切バックアップすることもサポートもせず、息子に「役者になる」と言われたとき、「そうか」としか答えなかったという。

 かつては親が我が子をつれて挨拶回りをしたり、親子共演で名を売ることが多かったが、今後はそうした因習も少なくなっていくのかもしれない。
 
 親の仕事を継ぐという意味では歌舞伎役者や落語家と変わらないものの、タレントの場は「芸の継承」、さらにはそのための指導もない。そこで子どもは華やかな世界で自分を見失ってしまうパターンが多く、悪い方向に出てしまうことがよく指摘されてきた。だが最近の“新2世”たちの活躍を見ていると、芸能人の親も子もようやく意識を改め始めたと言えるのではないだろうか。

(芸能ライター・飯山みつる)